万が一の遭難では、捜索費用や救助費用に莫大なお金が掛かる場合があります。
また、遭難後の入院や治療期間に給料が減ったり、貰えない場合もあります。
特に家庭を持つ登山者の場合、家計に与える影響は深刻です。
そうした山のトラブルに備えるのが山岳保険です。
しかしながら
- 実際の捜索救助費用がいくら掛かるか分からない
- 山岳保険に入院費や治療費の付帯は必要か
- どんな山岳保険やコースを選べば良いか分からない
などの疑問を持たれている方も多いと思います。
そこで我が家の事例を基に、補償に必要な要素を洗い出し、最適な山岳保険について考えてみました。
結果、我が家が最適と判断したのはココヘリ JROです。(厳密にはココヘリ JROは山岳保険では有りませんが。)
昨今、ココヘリ JROは改悪したと言われていますが、それでも我が家がなぜココヘリJROを選んだか理由を説明します。
・過去の遭難救助費の内訳
・家庭持ち登山者の山岳保険選びの着眼点
遭難で掛かる費用
遭難した際に掛かる費用について、抑えるポイントは以下の3つです。
- 捜索救助費用
- 治療費
- 死亡、後遺症での就労不能による収入補償費
上記3つの内容についてそれぞれ確認しました。
捜索救助費用
まずは捜索救助費用について確認します。
過去のデータから、想定される遭難救助費用と主な山岳保険の掛け金と保険金を調査しました。
2018~22年のJROの事後分担金支払実例を見ると、捜索救助費は平均26.4万円、中央値で11.2万円でした。
通算5年間で見ても、50万円以下の請求が全体の約94%を占めていることが分かりました。
一方100万円を超えるものは8件で、うち7件は行方不明となり捜索が長期化したことが原因です。
・捜索救助費用の大半は50万円以下
・一方、捜索が長期化すると300万円以上の捜索費が掛かる
治療費
無事、捜索救助が終わり、病院に搬送されたとしても、入院費や通院費が掛かります。
加えて、入院中は無収入となる点に注意が必要です。
住友生命のHPによると、骨折の場合の入院期間と治療費は次の通り。
骨折の場合の平均入院期間:約40日
治療費と食費(3食):約6500円/1日 (差額ベッド代は除く)
・治療費は平均26万円程度
・治療期間(約40日)分の給与カットにも備える必要あり
死亡、後遺症での就労不能による収入補償費
捜索で発見されたとしても亡くなってしまう場合や、救助、治療後も後遺症が残り就労不能となる場合も考えておかなければなりません。
サラリーマンが就労不能となった場合、以後の収入の大半が失われることになります。
「大学・大学院を卒業し、フルタイムで正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金(退職金を含まない)」は、男性で約2.7億円、女性で約2.2億円となっています。
提供:りそなグループ
その際、以下が残された家族や、その後の人生の負担となります。
- 住居費、住宅ローン
- 教育、養育費
- 生活費 (食費、光熱費、通信費等)
上記の額は各家族のライフスタイルによって異なるため、一概に幾ら必要と決める事が出来ません。
事前に家計を把握し、将来必要な金額を見積もっておく事が重要です。
・死亡や就労不能によって、残された家族、その後の人生の負担が増える
・将来必要になる金額は各家庭のライフスタイルによるため、事前に見積もっておく事が重要
各費用に対する補償と対策方法
ここからは、遭難で掛かる各費用の補償と対策方法を検討した結果を記載します。
捜索救助費用の補償と対策方法
遭難救助費用の補償と対策は山岳保険がメインです。
各山岳保険の掛け金と保険金、内容を登山のYouTuberりょーじさんの動画を参考にまとめました。
やまきふ共済会 | ココヘリ JRO | モンベル | YAMAP | |
---|---|---|---|---|
プラン | スタンダード | ベーシック | 山岳保険 F124 | 外遊びレジャー保険 |
掛け金 | 4000円/年 | 5500円/年 | 6630円/年 | 5840円/年 |
対象範囲 | 登攀、BC含む | 登攀、BC含む | 登攀、BC含む | 登攀、BC含む |
捜索救助費用 | 500万円 ※登山計画書提出済であれば1000万円 | 550万円 ※役務提供 | 500万円 ※登攀行程中は 100万円 | 300万円 |
個人賠償責任 | – | 1億円 | 1億円 | – |
入院・通院費 | – | – | – | 受傷部位ごとに最大30万円 |
死亡・後遺症保障 | 死亡:1万円 ※登攀中は除く | – | 最大5万円 | – |
携行品保障 | – | 3万円 | – | – |
その他・特記事項 | 発信機により遭難者を直接捜索できる唯一無二のサービス 反面、役務提供によるサービスなので、有料捜索隊の費用は保障外 | |||
保険公式サイト | やまきふ共済会 スタンダード | ココヘリ JRO ベーシック | 山岳保険 F124 | 外遊びレジャー保険 |
個々の保険の詳細についてはこちらの動画で紹介されています。
気になる方は参考にして下さい。
捜索救助費、掛け金の面から、最もコスパが良いのは、やまきふ共済でした。
また、ココヘリ JROは発信機による直接捜索が可能という他にはない圧倒的なメリットがあります。
反面、役務提供から外れる捜索救助費用については保障されない点に注意が必要です。
例えば山小屋等と連携する長野県山岳遭難防止対策協会(通称:遭対協)等で捜索、救助費用が発生した場合が該当します。
ココヘリ JROの保障内容については、じょあさんのブログを参考にさせていただきました。
治療費の補償と対策方法
治療費の補償と対策方法については民間の医療保険が活用できます。
ただし、一部の民間傷害、医療保険では、山岳登攀は対象外となっている場合があります。
ご自身の保険の約款を確認するか、保険の代理店に問い合わせて確認してください。
Q 趣味の登山をしている際に転倒受傷して入院しましたが、傷害保険のお支払い対象になりますか?
A 回答
基本的にはお支払いします。ただし、山岳登はん(ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマー等の登山用具を使用するもの、ロッククライミング(フリークライミングを含む))中のケガに対しては約款でお支払いできないものと定めているためお支払いできません。
対象商品:普通傷害保険
提供:チューリッヒ
医療保険に入っていない場合でも、健康保険組合のある会社に勤務している方なら、高額医療制度が使えます。
高額医療制度を活用することで、自己負担額を数万円まで削減できる可能性があります。
ご自身が加入している健康保険組合のホームページを確認してみて下さい。
トヨタ自動車健康保険組合の例
還付金(法定給付+付加給付(トヨタ健保独自))
提供:トヨタ自動車健康保険組合
- 1人・ひと月(1日~末日の受診)・1医療機関単位かつ、入院・外来・歯科単位で算出
- 月をまたいでの入院はふた月となり、それぞれの月で算出します。
- 保険適用外(差額ベッド料・食事代・文書料等)除く
また、モンベル山岳保険 D121や、やまきふ共済エキスパートプランで備える方法もありますが、保険料が割高だったり、補償費用が十分でなかったりするため、おすすめできません。
死亡、後遺症での就労不能による収入補償費の対策方法
死亡、就労不能については下記の2点で対策します。
- 民間の生命保険・・・・生活費、教育、養育費
- 団体信用生命保険 (以下、団信)・・・・住宅ローン
上記については治療費同様、保険の約款を良く読み込み免責事項に山岳遭難が含まれていないか確認してください。
また、死亡の場合は生命保険、団信共に遺体が発見され、死亡認定を受ける事がカギとなります。
山岳遭難で捜索しても遺体が見つからない場合は失踪扱いとなり、死亡認定されるまでに最長で7年掛かります。
その間、住宅ローンの返済や生命保険料の支払いは続く為、家族に負担が掛かり続ける点に注意が必要です。
失踪者が死亡認定されるのは、なんと7年後。あなたの家族は7年間もの間、あなたに会えない悲しみだけでなく、経済的な負担まで強いられてしまう可能性があります。
提供:ヤマップ
山岳保険の選び方(えび家の場合)
えび家のプロフィール
えび家の家族構成は以下の通り
- えび(30代)・・・登山者、登攀、BCなどのバリエーションも行う
- 妻(30代)・・・登山者、ほぼ一般登山道のみ
- 娘(1歳)・・・これから連れて行かれる
また、上記以外に考えるポイントとして、
住居:持ち家(えび名義での住宅ローン&団信あり)
保険:生命保険、医療保険に加入済み(夫婦共に)
この条件を基に、どの山岳保険を選ぶか考えました。
えび家が山岳保険を選ぶ考え方
我が家が山岳保険を選ぶ際の考え方は次の通りです。
捜索救助費用 | ココヘリ JROのみで対応可 |
---|---|
治療費 | 山岳保険での対応は不要 |
死亡、後遺症での就労不能 での収入補償費 | 山岳保険での対応は不要 |
詳細を以下で説明します。
捜索救助費について
過去事例から捜索を長期化させないことが大前提だと考えています。
- 遭難場所が特定できる場合、捜索救助費用は貯蓄で十分対応可能
- 生命保険や団信の観点から、遺体が見つからないのがワーストケース
以上から、我が家はココヘリJROのみで対応可能だと考えています。
一方、貯蓄がない家庭の場合、やまきふ共済にも加入しておくのがベターです。
治療費&死亡、後遺症での就労不能での収入補償費について
約款・担当の保険営業マンに確認したところ、治療費の大部分や収入補償はすでに入っている民間の医療・生命保険で対応可能でした。
また、治療費については、健保組合の高額医療制度が活用できることも確認しています。
以上から、山岳保険での保障は不要であると考えています。
まとめ
子供が生まれたり、ココヘリJRO改悪のニュースが流れてきたりなどで、山岳保険が気になりだしたので調べてみました。
結果、捜索救助費はココヘリJRO、治療費や就労不能での収入補償費は現在の民間保険で問題ないことが分かり、安心しています。
遭難するとヘリ1回300万円などの言説も聞いたことがありますが、居場所が分かっているのであれば、40~100万円程度のようです。(100万円は高いですが・・・)
民間のヘリの場合、1時間程度のフライトで45~50万円程度。救助隊員の費用などを含めれば、場合によっては1時間程度の捜索でも50~100万円ほどになることもあるといわれています。
提供:ALL About
一方、ココヘリJROのみの場合、遭難時にはまず緊急連絡先(両親やパートナーなど)からココヘリJROに連絡するよう、事前に調整しておく必要があります。
今回の記事を参考に、ご自身のライフプランに合った山岳保険を選んでください。
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